1. 福岡市の歴史と特徴
福岡市は古くからの歴史を持っています。725年に建てられた法隆寺をはじめ、古い寺院がたくさんあり、奈良時代からの歴史が残っています。この都市の歴史は、博多湾に面した場所にまでさかのぼります。15世紀には、大内義隆という戦国大名がこの場所を居城地に選び、博多津を整備して、貿易港として発展させました。
特に室町時代から江戸時代にかけて、博多は日本有数の貿易都市として栄えました。朝鮮や中国との貿易が盛んで、文化の交流の中心地でもありました。今でも、博多繁昌祇園行事などの祭り文化がその時代の面影を残しています。
1889年に政令指定都市として福岡市が誕生しました。戦後は、商業の中心地が博多駅周辺に発展しました。貿易港としての経験から、戦後は製造業よりもサービス業が発展し、福岡市の特徴の一つになっています。
また、福岡市は平野が広がるため農業が盛んであり、海岸線も豊かです。自然に恵まれた都市計画が行われ、中心部と自然が調和した立地となっています。福岡市の人口は約163万人ですが、その約3分の1は緑地や森林になっており、緑を保護する取り組みも行われています。
商業性や文化性、そして自然環境を持つ福岡市の魅力は、長い歴史の中で育まれてきました。
2. 福岡市長高島宗一郎の都市政策
高島宗一郎氏は、2010年に福岡市長に選出され、その後4期14年にわたって市政を率いてきました。彼の都市政策は、福岡市の成長を大きく促進する力となりました。
市長就任直後から、高島市長は天神エリアの再開発計画「天神ビッグバン」を提案し、ビルや住宅タワーの建設、歩行者天国の拡大などを進めました。この取り組みにより、天神は福岡を代表するビジネス地区となり、市街地の活性化が図られました。
また、IT分野やスタートアップ環境の整備にも注力しました。2017年に始まった「スタートアップ都市宣言」から、イノベーション・キャンパスFGNの設立(2017年)や国家戦略特区の誘致(2018年)などで、福岡をアジア有数のスタートアップエコシステムに育て上げました。
さらに、2025年に開通予定の地下鉄七隈線延伸や、福岡アジア会議の国際会議化など、国際交流の基盤整備にも注力しました。
現在進行中のプロジェクトには、2027年に世界都市サミットを誘致する取り組みもあります。国際会議の誘致は福岡市のグローバルなイメージアップに貢献する見通しです。高島市長の強力なリーダーシップが、福岡市の発展をけん引してきたと言えます。
3. スタートアップ・エコシステムの充実
高島市長は就任後、積極的にスタートアップ支援に注力しました。2012年には「スタートアップ都市宣言」を行い、その後2018年には国家戦略特区を誘致。これにより、個人事業主向けの税制支援など実験的な施策が可能になりました。
2017年には、廃校を改装したイノベーション・キャンパス「FGN」を開設しました。ここでは価格優待のオフィススペース提供や起業サポートなど総合的な支援を行い、利用企業は急増。現在では年間3000件以上の創業相談がFGNを通じて行われています。
福岡市内には多数のスタートアップ投資ファンドが立地しており、Nissay Capitalや産学連携ファンドなどが活発に活動。資金調達額は2012年の2億円から2021年には254億円と100倍以上に増加しました。
さらに大学や公的機関との連携も強みの一つです。九州大学をはじめとした大学との連携を重視し、研究成果の産業化や研究者の起業を支援。セキュリティ領域のサポートも公安委員会との連携を進めました。
これにより、IT企業やベンチャー企業が相次いで立地し、LINEやFreeeなどの本社や開発拠点も福岡市内に進出。アジア有数のスタートアップエコシステムが築かれました。
4. 福岡の国際的な評価
福岡市のスタートアップ支援と住みやすさは、国際的に高い評価を得ています。
2017年に野村総合研究所が行った「成長可能性都市ランキング」では、福岡市が全国1位に選ばれました。人口増加率や起業活動の活発さなど、総合的な評価が高く評価されました。
さらに、イギリスの情報誌「Monocle」が発表した「2017年世界で最も生活の質が高い都市」ランキングでは、福岡市が世界7位にランクイン。日本の都市では東京以外で唯一、上位10位に入りました。
2021年には世界経済フォーラム(WEF)が発表した「都市競争力ランキング」でも、福岡市がICTインフラやイノベーション力などで高く評価され、アジア市場で最上位の評価を受けました。
さらに、スタートアップ支援団体のグローバル・エンパワーメント・ファウンデーション(GEF)が2022年に発表した「アジアのスタートアップエコシステムランキング」では、福岡市が東京、北京、シンガポールに次ぐ4位に評価されました。
これらの国際機関からの評価は、福岡市のスタートアップ支援と高品質な生活環境を示すものとなっています。
5. 福岡のアメリカ資本の新オフィス誘致
福岡市は外国資本の企業誘致に積極的で、その成果の一つがケンブリッジ・イノベーション・センター(CIC)の福岡進出です。
CICはアメリカを拠点にする世界最大のスタートアップ支援企業で、世界26都市にオフィスを持っています。福岡市とCICは2021年、新福岡ビル内にCIC福岡事務所を設置することで合意しました。
2025年春に開業予定のCIC福岡は、新福岡ビル7~6階の約3,000m2を利用します。140室以上のプライベートオフィスやコワーキングスペースを提供し、会議室やイベントスペースも利用可能です。
CICはスタートアップ企業向けのインキュベーション・プログラムやファウンデーション・プログラムなど、事業支援を行う予定で、福岡市のスタートアップ生態系が強化される見込みです。
高島市長は「世界有数のスタートアップ支援企業が福岡に進出することは、我が市の魅力が海外でも認められた証拠」と述べ、外国企業誘致の成功を強調しました。
6. 福岡市の人口増と財政力
福岡市では人口の増加と財政の強化が顕著です。
2010年の人口約146万人から2022年末には約164万人へと増加し、高島市政下では毎年1万人以上のペースで増えています。その増加数は約18万人に達し、政令指定都市の中でも最も高い増加率を誇ります。
財政面でも着実な成長が見られます。2014年度の総税収2兆7,035億円から2022年度予算では3兆3,024億円へと約1兆円の増加を記録しました。過去6年間で税収は連続して過去最高を更新しています。
人口増加は労働力や消費力の増大を、税収増加は市営施設や社会資本の整備への投資能力向上を意味します。
高島市長のIT関連企業誘致やスタートアップ環境整備は、人口と経済の拡大に寄与し、コンパクトシティ政策は交通費の削減に貢献しています。
今後も人口増加と財政力は福岡市の将来性を支える要因として期待されています。
7. 福岡の将来的な国際金融都市への目標
高島市長は長期的なビジョンとして、福岡市を国際金融都市に育てる目標を掲げています。
その初めの一歩として、2027年に世界都市サミットを誘致する取り組みが進行中です。この国際会議誘致は都市のブランド向上と共に、金融規制の実証実験の可能性も模索する機会となるでしょう。
海外企業誘致においても、CICの誘致に続き、シンガポール銀行や三井住友銀行など金融機関の研究開発拠点誘致が進んでいます。
また、国際金融都市の実現に向け、福岡市は金融担当課を新設しました。サービス外国為替取引(FX)や転送法人税(VAT)など、国際取引に適した制度実験も検討しています。
長期的には国際金融機関の誘致も視野に入れ、香港やシンガポールなどの有力な金融センターとの競争を意識しています。
これからは追加の企業誘致と制度整備が進行し、2050年頃を目標に国際金融都市の実現を目指す方針です。
まとめ
高島宗一郎市長の都市政策の視点から、福岡市の近年の発展を俯瞰しました。
市長は就任当初からIT企業誘致とスタートアップ環境整備に注力しつつ、中心市街地の再開発や交通整備にも取り組んできました。その成果として、福岡市の人口と財政力が大幅に増強されました。
国際会議誘致や外国企業誘致により、福岡市の国際的な知名度と評価が向上し、スタートアップ生態系も整備されました。
高島市長の目指す国際金融都市への道は長いですが、これまでの基盤と政策が今後の発展の礎となるでしょう。2027年の世界都市サミット誘致は、そのきっかけとなる可能性が高いです。
14年にわたる市長の強力なリーダーシップが、福岡市を日本を代表するイノベーション都市へと導いたと言えます。今後も福岡市の成長に期待が高まります。